我ら4人兄弟、実家に集まる。
実家に4人で集まったのは、半年ぶりくらいだろうか。
前回集まったあの時は、母を自宅に迎え入れて、
そこから母を送り出すために集結したのだった。
それぞれが家庭を持ち、生活をしていると、
皆が揃うことは、中々難しくなるものだ。
実家に到着すると、家の中から姉の声が聞こえてきた。
賑やかな姉の声が、実家を活気付ける。
まだ父や母がいた頃のような錯覚に陥る程に。
リビングに入っていくと、もう皆集まっていた。
皆でテーブルを囲んで話が始まる。
その光景、
あまりにも懐かしすぎて、その懐かしいという感覚にただ圧倒される。
胸が一杯になる。
この4人は、父と母から生まれた子ども達なのだ。
この私の兄弟は、もちろん私も含めて、
父の、そして母の血を引いている。
母……、まだまだ悲しみが昇華出来ていない、
あの母の血を受け継いでいるのだ。
皆の顔を見ながら、郷愁が押し寄せてくる。
幼い頃から共に育ってきた。
今、向かい合っているこの食卓で、母の手作りご飯を共に食べてきた。
時には喧嘩もしたり、旅行もしたりした。
それぞれ共にこの家で、父母の元で成長してきた。
やがてそれぞれが巣立ち、この家は父母だけになった。
十九年前、父が旅立ち母は一人になった。
そして、母は四年程前にグループホームに入り、
半年近く前に旅立っていった。
もう誰もいなくなったこの実家。
しかし今日、それぞれ巣立った子ども達が戻って来て、
この食卓を囲み話をしている。
きっと、この家に集っているご先祖様達を始め、
父母も、この光景を見守ってくれているだろう。
『よくぞ戻って来てくれた、我らが子孫、
我らが子ども達。
お前達が揃って顔を見せてくれるとは、
こんなに嬉しいことがあろうか』
温かい見守りの中で行われた話し合い。
年を重ねてきた我ら四兄弟も、それぞれの人生を積み上げて来た。
こうやって、久しぶりに顔を突き合わせ、気遣いしながらの話し合い。
それぞれ兄弟の背後には、家庭が控えている。
父・母・妻・夫という顔がある。
しかし、今は、この家の子ども、兄弟同士という立場に戻っている。
懐かしい…。
今のこの状態そのまま、過去の子ども時代にタイムスリップしたかのような…
あるいは、してみたくなるような…。
時は流れていくものだ…。
さて、話自体は、スムーズにサクサク進行した。
そうして、皆解散した。
私は実家の外に出て、塀越しに木の枝を切り始めた。
挿し木をするための枝、伸び過ぎた枝等を切っていた。
と、その時、向こうの方から白装束の男性が、突然現れた。
その人は…見覚えがあった。
この近所の神社の神主さんだった。
「おや、あなたは…確か、この家の娘さん?」
「はい、そうです。母は…、母は、半年程前に旅立ちました」
「そうでしたか、半年程前に…。お悔やみ申し上げます」
「母が大変お世話になりました」
「お母様は、かつてよく神社にお参りされていましたよ」
そうなのだ。
特に、母は足が弱り出してから、こんな事をよく言っていたっけ。
「なるべく毎日散歩をするようにしているの。
あの神社まで行って帰って来られるようにね」
おそらく神社まで行ってお参りをし、
神主さんとも挨拶を交わしていたりしたのだろう。
お正月には、母と一緒にこの神社までお参りに行った事もあった…。
段々足が弱っておぼつかなくなった頃も、
私は母と、
「あの神社まで行ってみようか」
と、ゆっくりゆっくり歩いて行ったものだ。
神主さんに、
「今年のお正月も、私はこちらの神社にお参りに伺いました」
と、言ったところ、神主さんは、
「今度いらっしゃる時は、〇〇(私の旧姓)が来た、
と、おっしゃってください」
とのお言葉を頂けた。
あまりにも嬉しくて、涙が出そうな気持ちだった。
昔から母を知っている神主さんだからこそ、
余計に嬉しかった。
それにしても何という偶然、不思議な巡り合わせだろう。
母が、私を神主さんと引き合わせてくれたかのような…。
母は、神主さんに自分の事を報告したかったのかもしれない。
私はその役割を果たせたのだ。
そして、今度神社に行ったら、母の名前を出そう。
神主さんは喜んで迎えてくれるだろう。
そして、母のことを偲んでお祈りをしてくれるに違いない。
それこそ母の望んだことであり、その願いは叶ったのだ。
母のことを知っている人に会い、母のことを話すことができる、
これがどんなに嬉しいことか、改めてわかった。
母も、きっと喜んでいてくれるだろう。
実家の庭の片隅に咲いていたカタバミ。

子どもの頃からのお馴染みの花。
ふと気がつけば、どこにでも咲いている。