娘の定期的通院に付き合って、今日で数回目。
放課後、バスの発着駅で待ち合わせをして出発する。
待合室で、スタッフの人から告げられる。
「あと一回でお終いになります。お疲れさまでした」
え、あと一回でお終いなの?
いや、通院が終わるのは喜ばしい。
娘も学校帰りにバスに乗って、
やや遠方まで行くのは負担だったので。
もちろん私もそう。
しかし、終わりが見えた時に、一抹の寂しさがこみ上げてきた。
そう、私はバス路線の旅を、とても楽しんでいたから。
バス車窓からの風景。
昔からそれが大好きだ。
窓にへばりついて、ただひたすら外の風景をみる。
バスの速度で見る風景は、いくら見ていても飽きない。
次から次へと様々な建物、人々の暮らしをみせてくれる。
何気ないお店の中が見える。
そこで商いをしている人、列で会計を待つお客。
ほんの小さな部屋のそろばん教室。
うつむきながら、真剣にそろばんをはじく子ども達。
そして、バスを乗り降りする乗客たち。
赤ちゃんを胸に抱っこし、かつ幼児と手繋しているお母さん。
女子高生が幼児の相手をしてあげている。
たまたま一緒に降車になり、お互い手を振って別れるシーン。
まさに一期一会。
目的の地で降りていく乗客と、
これから目的の地へ向かうために乗車してくる乗客。
バスの中で一瞬交差し、別々の道についていく。
まさに、袖振り合うも他生の縁。
そんな人間模様、そして街の風景を見るのが好きだった。
帰り道、病院からバス停へ向かう途中、娘が空を見上げて言った。
「わあ、きれいな雲」
指さしたその手の先には、赤みがかった雲がくっきり浮かんでいた。
天空には、幻想的な世界が広がっていた。
どこまで続いているんだろう。
このまま異世界へ誘われているかのような錯覚をおぼえた。

「本当だね、明日も晴れかな?」
二人でパシャパシャ写真を撮った。
強風が吹き荒れる。
「おお、寒~!」
「なんか、ここに来る時って、よく強風に見舞われるよね」
母と娘、腕を組みながら、足早にバス停に向かう。
こんなシーンもあと一回。
終わりが見えると、途端に、
より一層その出来事が名残惜しく、貴重なものに様変わりする。
終わりがあるからこそ感じられる、物事の尊さ。
いつかは必ず全てのものには、終わりが訪れる。
だからこそ、この夕焼け雲、強風、娘との腕組、
これらの出来事、
一瞬一瞬を大事にしていきたい。
さぁ次回の最後のバスの旅、
どんな風景や人が見られるのだろう。
そして、娘と歩きながら病院やバス停に向かう道。
また夕焼けが見られることを願おう。
参考記事 過去のバス車窓からの記事