今日は、夫と娘と三人で母に会いに行った。
母は、今日は完全に良く眠っていた。寝息がスースーしている。
娘と二人で、母の顔や手を拭いたりお世話をしていた。
ちょっとだけ、水差しを口に運び、口元に水を差し込めた。良かった。
その時、夫が、「あ、鳥があそこに」と言った。
窓に目を向けると、確かに電線に鳥が止まっていた。
真正面の電線なので、鳥はこっちをじっと見ている感じがする。

夫は鳥の写真を撮っていた。
母のお世話に気が向いていた私は、それ以上気に留めなかった。
今日は、まきびとひつじを・ふるさと・早春賦・君が代・おぼろ月夜を歌った。
そして母のホームを後にして、車に乗った。
今日は娘のバレエ教室のレッスン参観日だ。
このまま車でバレエ教室に直行することになっている。
なぜか、娘は一人で電車で行くという。車の匂いで酔いそうだからと。
途中の駅で娘を降ろして、夫と車でバレエ教室に向かう。
と、夫は車を走らせながら言った。
「あの鳥、パパさんかな?」 ※パパさんとは、私の亡父である。
ハッとした。確かに言われてみればそんな感じがする。
じっとこちらを見つめていた鳥、長い間こちらを見つめていた。
そして、突然数か月前のことを思い出した。
母と、母の今の部屋にいた時の事。
突然、母が「あ、鳥がいる」、と指さした。
見ると、やはり鳥が電線に止まってこっちを見つめていた。
今日と同じ電線の場所で。
母は、しきりに何度も鳥の事を言っていた。
可愛いわね、とか、あと何とか言っていた、もっと気に留めておけばよかった。
今思えば、どうしてあんなに鳥の事を言っていたのか、不思議だ。
しかし、それが父ならば、父の魂が宿っていた鳥ならば・・・
なんだかすごく合点がいった。スッと何か繋がった気がした。
そうか、パパが来てくれていたのか、ママの事を気にかけてくれて来てくれたのか。
胸の奥がツーンと来た。
パパや、まだまだママは生きている。よく眠っている。
限りある生を全うしようとしている。
まだ生きている。だから見守っていて。
ママに、ママの夢の中に語り掛けて。
霊感もゼロだし迷信も大して気にしない性質だが、
今日の出来事は信じざるを得なかった。
娘のバレエレッスンを見ながら、何度もこの出来事を反芻した。
そして、傍らには生き生きとレッスンを受ける娘がいる。
そこにはまさしく、今を生きる若い生命があった。
そして、深い眠りに向かう母。
世代は受け継がれていく。
このところ気が張って悲しみの中にいたが、
この出来事で少し慰められた気がした。
もちろん明日も母に会いに行く。