スイスの児童書「雪のたから」を読んだ。


「雪のたから」
これだけではピンと来ない方も多いだろう。かくいう私もその一人だった。
世界名作アニメ劇場「アルプス物語 わたしのアンネット」のタイトルならば、
視聴された方は、ああ、あれか、とピンと来るだろう。
タイトルに惹かれ、何も知らずに読み始めて聞き覚えのあるキャラクターの名前、
状況設定から、「あ、アンネットだ」とわかった次第である。
スイスの山村を舞台にした物語である(1940~1950年頃と言われている)
アルプスの少女ハイジとよく似た舞台背景だが、内容は全く違う。
原作とアニメは大まかな筋は同じだが、細かい設定はだいぶ改変されている。
ここでは、原作「雪のたから」を中心に話したい。
主人公アンネットとルシエン。
ルシエンはふとした悪さから、アンネットの弟ダニーに大けがを負わしてしまう。
一生歩けなくなってしまったダニー。
アンネットは、ダニーを憎しみ抜き復讐の心で煮えたぎっている。
(この時アンネットは12歳!)
ルシエンは、打ちひしがれ自暴自棄になる。
この二人の心の葛藤と許しをテーマに話は繰り広げられていく。
いやあ、児童書というよりテーマは大人が読んでも十分な程。
冒頭は、少し前時代的な文章表現や生活様式で、読みにくく取っ付きにくかった。
が、ストーリーが心の葛藤、苦しみ、許し、揺らぎ、受容等がどんどん展開してい
き、その中々シリアスな内容に目が離せなくなってきた。
ルシエンの絶望や苦しみと共に、アンネットの憎しみや苦しみも描かれている。
それが対比、並行しながらストーリーは進んでいく。
キリスト教の教えがだいぶ盛り込まれていて、それが物語に深みを増し、より説得力
が出ている。
何より共感したのは、気持ちの揺れ動きが理想的でなく、実にリアル、人間臭いという
ところ。
アンネットがルシエンに対し、罪悪感を持ったり許す気持ちになったかと思えば、
又、許せない気持ちがもたげてくるところなどがである。
周囲の人間、アンネットの祖母がアンネットに対し、聖句を引用して心持ちを説いて
いく所もすごくいい、心が洗われる。
人として周囲から許されるには、愛されるには、どうすべきか、が無理なく織り込ま
れて、スッと頭に入って来る。
そして文章も美しい。当時の素朴な生活様式、村の風習など、目に浮かぶようだ。
日本で言えば、原田泰治さんの世界、スイス版であろうか。

時代・場所・宗教は違えど、人としてのあり方は変わらない、
そんなことを改めて思わされた作品でした。